絶滅危惧種
中村信哉の苦悩 
〜北の国から〜



ついにその日はきた。

6月25日(火) 

AM 11:50
JAL2903便 仙台空港発 新千歳空港行き

一時間ちょっとのフライトであるが私にとっては非常に大きな意味を持つ。
そう・・・“本気咬みの咬癖犬”を迎えに行くフライトだからである!

北海道行きは一本の電話から始まった・・・。

相談先では本気咬みに困り果てた飼い主様が預かりの訓練を希望されているのにそれを断られ、しつけ教室にて行うと言われたらしい。

プロフェッショナルとして飼い主様を咬まれる恐怖に怯えさせたままでいる神経が私にはわからない・・・。 大型犬で咬むものだからなんかかんか理由をつけて拒否されたようである。


“咬む”っつってんだから四の五の言わず預かってやりゃぁいいだろ!!(ガンチ)

おおガンチ!!今日も憤ってるな!


また飼い主様や他人様を咬んだら犬はさらに自信持っちゃうよ・・・。

もしあなたの大切な人を咬んでしまったらどうするの?

飼い主様、心折れちゃうよ・・・。

所詮他人ごとなのかな?


飼い主様の相談を聞いていて“非なるプロフェッショナル”の存在に溜め息が出る・・・。

すぐに航空チケットとレンタカー、それと留守番の手配に取り掛かった。

妻子を連れて実家を訪れて以来じつに10年ぶりの北海道、しかも旧知の多い千歳を訪れることとなった。

過去に大阪や名古屋からの依頼はあったが今回は北海道、“日本全国送迎始めました”から約一年。海を越えてついに北海道から・・・自然と胸が高鳴る。

到着後、出迎えてくださった飼い主様とのご挨拶も早々に済ませ、すぐに貨物ターミナルのそばでわんこと対面し、飼い主様にわんこの状況や訓練方法などを可能な限り詳しく説明してさしあげた。

わんこもリードを持った私に体をくっつけ、だいぶリラックスした動作を見せ始めてきた・・・と思いきや拾い食いを注意した刹那、襲いかかってきた。


「待ってましたぁ!!」


中型犬の場合、リードを引いた時に一番近い足を咬まれることが多いが、大型犬の場合はリードを持っている左腕を咬まれることが多い。案の定、左腕を咬みに来たので間合いを詰めさせないように瞬時にリードを引き上げ、一定の距離を保ちながらも私の間合いに引き込み、しっかりとおしおきしてあげるとそれ以上向かってくることはなかった。

フセをさせてマウントポジションをキープすると観念したのか体の力を抜き始めた。ほどなくしてわんこも落ちついたので続きは栃木に帰ってからと言うことで入所の手続きをとっていただきペット専用搭乗口へ向かった。

じかに飼い主様とお会いして詳しい話を聞き、切迫した状況を肌で感じ、身の引き締まる思いがした。

ペット専用搭乗口からわんこを見送り、飼い主様と再会を約し、搭乗口へと向かった。


「さて、土産でも買って帰るか・・・。」


階段を上り始めた瞬間携帯が鳴り、びっくりして出てみるとよその訓練所でアンビリーバボーな訓練を受けたというわんこの飼い主様から・・・。そのわんこも咬癖犬である。

どうやら卒業して戻ってきたのはいいがこれまたアンビリーバボーな飼い方を御指南頂いたらしく早くも限界らしい・・・。(じつにアンビリーバボーな御指南についてはまた後日)


「戻ったら今度は東京だ・・・」


滞在時間わずか3時間半、北海道の地に沈む夕陽を見ることもなく再び搭乗ゲートをくぐった。

PM 4:30
ANA4786便 新千歳空港発 福島空港行き

一頭のわんこの“運命”とプロフェッショナルの“矜持”を乗せた飛行機が北の大地を後にした。


「今度こそ必ず戻ってくる・・・。」


高度1500mから見下ろす北海道上空に広がる厚い雲は雪景色と見紛うほど限りなく白く、陽の光を浴びて色鮮やかに光り輝いていた。


絶滅危惧種:中村信哉はどこへでも飛んでいく。しかしそれは国内におけるプロフェッショナルの不在を意味する。



























ガンチ:このコーナーに出てくるフィクション犬であり私の心の叫びとリンクしている。ちょっとガラが悪いが気にしなくて
       いい。ガンチの行動は過去に出会った半端じゃない犬たちをモデルにしています。これから時々登場しますの
       でどうぞよろしく!

コマンダーさん:元グリーンベレーの隠居のおじいさんでガンチの飼い主
ゴードンさん:コマンダー家の隣に住むフリーライター 
サリー:ゴードンさんの愛犬


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