絶滅危惧種
中村信哉の苦悩 
〜至福のひととき〜



北海道への浪漫飛行より遡ること5日前・・・・。

私は雨の中、中部地方へと向かっていた。
あるアマチュア訓練士様よりSOSをいただいたので熊五郎・デニス・カイと共に東名高速をひた走っていた。

その夜は高速のパーキングで車中泊。 自作のベッドの下にはデニスと熊五郎そしてカイ・・・
競技会以外でこの3頭で出かけるなんて初めてであり、なんだか楽しかった。

最近の高速道路はじつに愛犬家にとって嬉しいサービスがある。

“ドッグラン♪ ”

その日は雨だったので誰一人としておらず貸し切り状態。

「ここのところいろんな事があって忙しかったからな。今日はゆっくり遊びましょう。」

熊五郎・デニス・カイとゆったり遊んだ。走ったり、地面の臭いを嗅いだり、時々思い出したように私の下へ走ってくる。各々好きなことをしている彼らをただ見ているだけなのになぜか涙がこぼれてきた。

「“こよなく”に少し近づけたのかな・・・」

小雨降る中であったが近年味わったことのないほどに至福のひとときだった。

明けて21日(金) AM6:30

目的地まであと少し・・。 予定より5分遅れて約束の場所へ到着。

すぐにいつも練習しているという河川敷へ移動し、挨拶も早々に早速練習開始!

練習ではもちろん技術的なことからメンタルの部分までとにかく喋りまくった。

しかし今回のコーナーでは技術的なことは一切書くつもりはない。メンタル面の話のみ。
もっとも私が伝えたいのは技術的なことではなく“訓練を楽しむための心得”だからである。

自分なりにたくさん勉強したことが伺える。
様々なしつけ教室に通い、競技会場へ足を運びいろんな人にアドバイスを受け、自分なりにがんばったことは犬を見ればよくわかる。おしむらくは“人も犬も楽しむこと”が置き去りにされたことである。

犬はものすごくいい。身体能力・作業意欲・性能・資質、どれをとってもピカイチである。
ところが・・・ところがである。どんなに素質があっても教え方を誤れば伸びないのである。ダイヤモンドの原石も磨き方を誤ればただの石ころ同然になってしまうこともある。

「“楽しく”なければ訓練ではありませんよ。楽しむために“訓練”をするのです。
訓練そのものが遊びであり、遊びそのものが訓練とならなければいけません。
眉間にしわを寄せて訓練してはダメです。」

芸を教えることを最優先にするがあまり、無理強いをし、できたかできないかだけで犬を図り、肝心の犬が楽しんでいるかということを図っていない。表面的に犬がやっているように見えても犬の心理状況が曇っているようではのびしろは日を追う毎に短くなっていく。表面的には「まだまだ上手にできるのは先だな」と思えても犬の心理状況が快晴であれば6ヶ月後、1年後の出来映えは天と地ほどの差が出てくる。

「アマチュアさんだからこそもっと楽しんで欲しい・・・」

という言い方をするとプロは楽しくないのかと突っ込まれそうだが少なくとも私は楽しむように心掛けている。何も一般家庭犬の訓練に限ってのことではない。殺す気でかかってくる本気咬みの咬癖犬を訓練する時でさえ楽しむことを考えている。咬癖犬を訓練する時は尋常ではない集中力を要する。殺るか殺られるかの真剣勝負。立ち位置、呼吸のズレ、間合いの計り方のミス・・・・一瞬の迷いが命取りになる。

1頭やるだけで通常の犬の何倍もの労力を必要とする。重症な咬癖犬を相手にしたらもうその日は仕事にならない。その状況下で一日も早く犬が楽しめるように、人も楽しめるように頭を使うのである。楽しむために工夫するのである。 咬癖犬の場合そこまで到達するまでにかなりの修羅場を繰り返すが・・・・到達した時には“究極の訓練”という至福を味わうことができる。

結果のみを気にするのではなく、犬が楽しめているか、そして自分自身も楽しめているか・・・そこを気にして欲しい。

ついつい結果を早く見たくて焦り、無理強いしがちになりやすい。それは私とて同じ事。しかしそれはこっちの都合で犬には関係のないこと。やるのは犬なのだからもっともっと犬がワクワクするような、「もっ ともっと訓練しましょうよ♪」オーラを出してくるような刺激のあるアクセントのある、ついつい訓練中に鼻歌がでてしまうような、踊りたくなってしまうような気持ちになるように心掛けましょうよ。 私たちは犬と遊ぶために犬を飼ったのではないですか?

技術的なことはそんなに難しいことではないですよ。
リードの使い方、チェーンの使い方、道具の使い方、エサやボールの使い方を覚えれば良いだけの話です。しかし犬の心理状態を読むことができない訓練士は素人目にはよくやるように見えてもプロの目からすれば「ああよくやるね・・・・」で終わってしまうのである。ところが心理状態を巧みに読み取ることができるようになれば無駄なことはしなくなり、必要以上に叱ることもなくなり、2段とばし3段とばしで階段を上るが如く訓練が入っていくようになる。


「ちょっとリードをかしていただけませんか?」


オーナー様からリードを受け取り、グランドを所狭しと駆け回った。
何をするわけでもなく犬と走り回りただ遊んであげた。
ふと見るとオーナー様は大粒の涙を流しながら号泣されていた。

「そんなに楽しそうに動き回るその子を見たことがない」

そうおっしゃられた。

「なによりその子、他人がダメでこの3年どこの教室でもトレーナーさんを見ることなんてほとんどなかったんです。触らせなるなんてとんでもない。リードを持ってもらったのは先生が初めてです。」

「それは光栄ですね」

一番多く参加した教室では「褒める必要なんて無い」と言われてたという。

今までこの方が見てきたものがどれだけ悪いお手本だったのかが推し量られた。 むごすぎる・・・そう思えた。

犬が好きで飼ったはずである。犬の喜ぶ姿をみて嬉しくない飼い主などいるわけがない。
小手先の技術や目先の利益に囚われて楽しむことを忘れては進むものも進まない。むしろ後退する一方である。

我々はプロフェッショナルである。アマチュア訓練士に教えてさしあげるのはテクニックでもしょーもない自慢話でもない・・・。“訓練を楽しむ”ことである。 そこに戻れればもう迷うことはない。

「えっ!?テクニック教えてくれないの!?」

そう思われることであろう。 もちろん教えるが焦ることはない。
楽しむために行うことそのものに全て含まれている。楽しむことを常に心掛けていれば“あら不思議!!” そう思えるほどに上手くなっている・・・。


朝7:00〜夕方4:00 休憩時間中も含め約9時間話し続けた。

あっという間の9時間だった。

「では10月の霧ヶ峰でまたお会いしましょう」

再会を約し、河川敷を後にした。

「さて・・・うなぎパイでも買って帰るとするか・・・。」

楽しむことを思い出されたその方は今至福のひとときを過ごしているに違いない。
再び降り出した雨の中、一路栃木を目指し高速道路をひた走った。




「オレの出番は?」 (ガンチ)
おお!ガンチ!!ごめん今日はないんだ・・・・。



絶滅危惧種:中村信哉はどこへでも飛んでいく。しかしそれは本物を伝えるプロフェッショナルの不在を意味する。


ガンチ:このコーナーに出てくるフィクション犬であり私の心の叫びとリンクしている。ちょっとガラが悪いが気
 にしなくていい。ガンチの行動は過去に出会った半端じゃない犬たちをモデルにしています。これから時々登
 場しますのでどうぞよろしく!

 コマンダーさん:元グリーンベレーの隠居のおじいさんでガンチの飼い主
 ゴードンさん:コマンダー家の隣に住むフリーライター 
 サリー:ゴードンさんの愛犬




























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